2022 JHS Herb Times Vol.10

花を持つ前に寒さがくるのに成長するMilk thistle

秋も深まり葉の色付きが綺麗な紅葉を見せてくれる頃を迎えています。
今年の夏は暑かったという人もいますが、私は、そして研究圃場ではそれほど暑さを感じる間もなく秋になってしまいました。
平均朝の5:00を目安に毎日圃場へ通い11:00頃には圃場作業を終えて帰宅するといった夏を過ごしました。
私のお休みは雨の日だけ。
圃場の管理を早朝からお昼前までと徹底したことで、暑さを極端には感じないまま夏が終わってしまったのかもしれませんね。
実際に残暑らしき暑さもなかったことが原因しているのでしょう。

さて10月はこれまでになく多くのさし木を中心に来春用の苗の仕込みに力を入れました。
来年から2−3年のプロジェクトとして、多量の苗が必要になることも原因してのことなのですが、それとは別にこの数年前から私の中では苗の購入をすることに抵抗を感じる様になってきています。
意識しなくてもこの15年の歳月で、すでに苗の購入はよほどでない限り必要としていないのですが、しかしそれが理由ではありません。

その理由は?
苗はどのようにして作られているか?
これは多かれ少なかれそのherbを無視したタイムテーブルに乗っ取り、人間の都合で育苗のタイムテーブルがコントロールされているという点。
もちろん最初から発根剤や発芽促進剤など人工的にケミカルなものが与えられ、herbにとっては初めの第一歩からストレスが与えられている点。
などが私の懸念材料となっています。

次に植物としての経験値の重要性?
herbに限らず植物は毎年根を下ろした地での経験を記憶として積み重ねて生息しています。
気候変動などに対する抵抗力は、その地で生きた経験値の浅い株は経験値の多い株には劣ります。
毎年毎年植物もその地での環境を学んで生きているのですね。

そして同一品種内における株ごとのパーソナリティとその継承性?
同じ名前を持つ品種でも株によって香りや、花の色などの違いを感じたことはありませんか?
実際、同じ品種でも株ごとにかなりの違いが出るのは確かです。

細かいことを言えば、理由はもっとあるのですが、大きくは前述した3点から考えただけでも、安易に株や苗を購入して定植することに最近私の中では抵抗を感じるようになってきました。

ですから、必要なものは自給自足♡
自ら苗作りをして、増やしたり保護したりすることに意義を感じています。
もちろん苗づくりの新たな方法やその技術の研究そして育てる楽しみもあります。

発根の適期を見てプラグからポットへ移し越冬をさせて来春の早期定植を目指します

苗づくりを成功するためのヒントは、個々のherbの植生にあります。
例えば、どのような根を持ち、どの様に土の中で生育するのか?
原産地は?という事からどの様な環境を好みどの様な環境を嫌うのか?
当然のことながら、発芽、生育、開花、結実の時期は?
どの様な形でどの方向に向かって地上部は繁殖するのか?
など、簡単に言えばその子の個性をできるだけ詳細に知っておくことが大切です。

これらは実際に年月を重ねてその子達を育ててみないとわからない情報となります。
なぜなら、herbの多くは欧米から由来しているため、実際にどんな状態が本来の姿なのか?掴みきれないことが多くあります。
単に園芸的に撮られた画像を見たり、翻訳されている文献を読んでも、基準とするものを実際に目で見ていないため、順調?健康?豊作?と程度がわからず安易に喜んでもいられないのです。

大きく青々と広がった株を眺めて満足していて、実際に現地で本物を見て、あれはただの葉ボケだったという様なこともよくあります。
ですから、少なくとも国内での平均値は得ておく必要があると考えます。

本来herbは園芸種ではなく野生種です。
野生種としての形や野生種の香り、野生種の色を基準にすべきでしょう。
よく交配を繰り返した品種でも、時々先祖返りをすと言うことを聞いたことありませんか?
原種同士の自然交配で生息している野生種も多くあります。
しかし注意深く観察したり香りを嗅ぐとそこには元となった植物を思わせる、原種の色や形、香りを垣間見ることができます。

10月、冬越え用の多くの苗仕込みを始めてしまい、収穫よりもどっぷりとそれに溺れてしまった私は今お話しした様なことに想いを寄せてあっという間のひと月でした。
毎日同じ様な変化のない自宅と圃場との往復で日が暮れて行きますが、目を向ける矛先が少し違うだけで、取り込まれていく世界も大きく変わっていきます。

11月はいよいよ圃場シーズンラストの月となります。
この3月から11月の9ヶ月間何をしてherbと向き合ったかで残り3ヶ月の冬が決まります。
今年の成果はその3ヶ月に何をもたらすのか自分でさえよくわからないのですが、まずまずの今シーズンだったと思っています。

冬支度を整えて私と一緒に手元で過ごすherbたちが今年は大勢います。
とても賑やかで、こたつにこもってみかんの味を堪能している時間もなさそうです♡

2月末あたりの乗り越えがポイントのhibiscus、でも今年はプロの方からあるヒントを♡

11月一杯ギリギリまで続く苗仕込み作業。
やりたいものが多すぎて優先順位を持ってやりながら、時間切れで手を出せずに終わる品種も出るかもしれませんが、やれるところまで追い込みたいと思っています。
収穫の追い込みと同時進行になりそうですので、11月はその両方をレポートしたいと思います。

皆様も気候の変わり目、お肌の手入れや、体調に気をつけてお過ごし下さい♡

手前完全匍匐性のRosemary. 中央 Mint. 奥左側 Vetiver. 奥右側 Lemongrass
2022年11月2日Permalink