2023 JHS Herb Times Vol.16

圃場に隣接する光景
今年はあっという間に枝垂れ桜も開花しました

皆様、いかがお過ごしでしょうか?
私の住む四方の山肌はバンビの背中のように点々と山桜が満開です。
毎年見慣れた光景ではありますが、年々木々が成長し一回りずつそのピンクの点が大きくなっていくようです。

一方で早くも今年はスギ花粉の飛散が終わりを告げています。
私はひどいスギ花粉症で、60年近くこれと付き合っています。
今年は幸いにもその期間が1ヶ月だけだったことに驚いています。
通常では毎年遅くともバレンタインまでには始まり、GWの前まで飛散が続きます。
しかし今年は3月1日から突然強烈な花粉の飛散が始まり、3月末にはほぼ終了しているようです。
世間では量的にも多かったためか、今年はひどい状況だと告げられましたね。

スギが花粉を散らすことは当たり前で、花粉を飛ばさなくなったらそれこそ異変的です。
毎年桜の花が咲くように植物のサイクルなのです。

ここのところ、始まりも終わりもはっきりしないダラダラ傾向でしたが、
今年は一気に始まり一気に振るといった珍しい状況でしたね。
herbの動きももしかしたらそのようにイサギの良い流れを辿るのではないかしら?
そうherbたちが私に問いかけて来ています。。。

私たちはどう植物が動こうともそれに寄り添うしかありません。
自然を動かすことに翻弄するのは無意味で、所詮不可能なことなのです。
山中湖から望む富士山のように自然は目の前に立ち阻み、私たちには大きすぎてただ佇むだけのような感覚です。

すでにシーズンが動きはじめましたが、自然主導の元、JHSも学ぶことの多い年になるよう日々真摯に向き合って行きたいと思います。

いよいよ土からの栄養と温度と太陽の光を得て大きくなって欲しいPatchouliの苗たち

さて、今の時期は5月の声を聞くまで花の無い時を過ごします。
その代わり多くの芽が盛んに満たしてくれる時期でもあるのです。
全てをご紹介することは不可能ですが、その中でも私が少々気にかける子達もいますので、それを2、3ご紹介できればと思います。

このPatchouliは私の中ではリベンジのherbです。
随分前に、でも今の JHS研究圃場にて栽培暦のあるherb。
もともと精油との出会いで知ったherbなのですが、この香りが墨汁に似ておりなんとも心落ち着く香りを持っています。
生薬名カッコウでも知られています。

西洋では芳香成分を主体に生薬と違った使い方がされています。
Sandalwood 、Jasminと並ぶこの芳醇な香りはなんとカシミヤセーターなどの防虫に使われるほど特定の昆虫の苦手な香りでもあるのです。
葉を乾燥させ、発酵させ、水蒸気蒸留によって得られるその濃厚な香りは、華やかな香りを超え奥深さに満たされる香りです。
性質は強壮と鎮静の2面性を持ち、そのコントロールは使用する量で調整することができます。
さらにここであげておきたいことは、瘢痕形成に役立てたいherbの一つです。
この精油が踵のひび割れを改善するほどの力があることは確かです。

一方でこの香りが食欲をセーブするとも言われています。
食欲旺盛な私にとっては残念ながらそれを体感したことはありません。
風が吹けば桶屋が儲かる的に、ダイエットにも役立つそうな???
美容界においてまとめてみると?
瘢痕形成に次いで収斂作用、利尿作用もあげられているherbです。
体重を落とした後のたるみ、セリュライト、ダイエットに効果的だとも言われている様です???
ご興味のある方は試してみてください。

美容界はさておき、もう一つ私が強く感じているPatchuliの性格は?
Vetiverの持つ強い土の香りにも近い、しかしそれとは違うもっと柔らかい土の香りを持っています。
個人による感覚的なことなのですが、グランディングに近い、地に足をつけるような落ち着きとともに、掴み所のない不安を払拭し、頭をクリアーにしながら、現実を受け入れ、客観視できる力を与えてくれるherbだと私は信頼を寄せています。

初めの頃、この力を知る私にとっては、仮に蒸留にまで漕ぎ着けられなくても、どうしても、この植物に一目会いたく、育ててみたく、そばに置きたく、その一心で種から育てた過去を思い出します。

今回は特にそのような熱い気持ちではなく、久しぶりにまた会いたいね!
という軽い気持ちで苗を作ってみました。
しかし、お手入れや移動をさせるたびに、希釈された精油のようなレベルで、香り立つPatchouliに触れていると、やはり心がはやります。
ともに今シーズンが過ごせますように。。。。祈るしかありません。

2022年よりも早めにカットしたVetiver

先ほどPatchouliでも触れたVetiverについて。
これまでに比べると今年は少々早めのお手入れをしました。
と言うのも、4-5年前から、Vetiverの管理を研究中なのです。

初めは今年よりも早くにカットし株を弱らせる結果に至りました。
次の年はカットはしたものの、前年度の枯れた茎と新しい新芽をかき分けながらのお手入れで、かなり手こずった経験もしました。
昨年はカットはしないまま新旧入り乱れての放置でした。
そしてこれが今年の管理方法。
この4年間の間に行った、管理のあれこれ。。。

いよいよ答えに近づいています。
残念ながら国内でのVetiver栽培はメジャーではありません。
栽培においては、当然私にはherbの師匠はおらず、ただただ実験を繰り返し、それぞれ本人たちから教わるしかないと言った原始的な道を歩んでいます。
チャンスは毎年1回ずつ、そして失う危険性も孕み、本当にアグレッシブな学び方です。

「herbを育てるためにherbを師匠とする」これが私のスタイル。
答えを得るときは確実です。

すでにVetiverno株の中で は新芽が吹いており、私の頭には見事なVetiverが今シーズンも風に揺られ、先っぽを90度に傾げて愛嬌を振りまいてくれる姿が目に映っています。

2023年Garlicも出揃いました。

ところで、国内では野菜扱いのGarlicですが、西洋では歴とした薬用植物として扱われる一面も持っています。

私にとって Garlic 栽培は、15年をすぎる歴があるにもかかわらず、今だにあれこれと実験栽培をしている大物です。

薬用と言っても、まさか精油を取って体にすり込むこともできず、herb teaにして飲むわけにもいかず、結局摂取の仕方はもっぱら料理で取り入れています。
しかし、一年で摂取する量は2キロの種から育つ収穫量に匹敵しています。
数で言えば、150個程度、私は2日おきには一個のGarlicを食べていることになります。
まさに自給自足を続けています。
そんなに食べたら体も呼気もニンニク臭いのでは?と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことは起きません。
それはオーガニックのGarlickを食しているからです。
もちろん調理の時はとても食をそそるGarlic臭に満たされ、お料理そのものも香り豊かな一品と仕上がります。
味覚的にもスパイシーな味を楽しむことができるのですが、そこで終わり。
翌日に残ることは決してありません。
最初の頃は、「私の作るGarlickは香りがイマイチ」と、栽培方が悪いのだと思ったこともありました。
しかし他の方が作られたオーガニックのGarlicをいただいても、私のそれと同じテーストと感覚であることに気付き、ラーメン屋さんのいくらでも召し上がれ的なニンニクとは違うことを理解したのです。

特に植える時期を毎年模索しています。
標準では、10月下旬から11月にかけてとされていますが、私は10月から翌年2月まで実験したこともありました。
栽培方法というのはそれぞれその栽培地によっても異なり、さらに土質によっても異なりが生じます。
ですから育て方は標準値はあれど、その地、その土に於いてのオリジナルと受け止めた方がいいでしょう。
そう言った中で私の研究圃場での栽培方法は、ほぼ確立に近づいています。

今年も2月の難関をうまく乗り越えることができました。
herb栽培においては風通しが重要です。
JHS研究圃場はそれが叶うように環境整備を行っているため、北風も遠慮なく吹き通します。
一方でGarlic 栽培では、北風による葉焼けの被害を回避することが大事な条件なのです。
その対策として人工的に何か柵を立てたり、被せたりと言う一般的なやり方もありますが、その手段は、JHS研究圃場の在り方には合致しません。
その両方を成り立たせるため、毎年研究をし納得のいく栽培方法を編み出しています。
今年、どのように実を結ぶのか?
それを楽しみに、梅雨前までお付き合いして行きます。。。

移植したElderとBlackcurrant

春雨を味方につけるため、このピンポイントのタイミングでElderとBlackcurrantを移植しました。
両者とも、元々研究圃場の住民です。
しかし彼らは鹿さんたちの好物でもあり、ここではプロテクトなしにそのまま穏やかに住み続けることはできないherbなのです。

一時は食べられても頑張る力をつけようと試みた歴史もこの子たちは背負っているのですが、弱肉強食的に絶えそうになったので、私のある程度の保護を受けながら生き延びてきました。

今年から私の中での3カ年計画、Rosemary project 開始の時を迎えたため、相乗りで移住をしてもらったのです。
気持ち的、もう少し早めの移植がベストと分かっていながら、project の進行具合と合わせなくてはならず、多少の心配を抱えながらの移植となりました。
今の所順調に何もなかったかのように生育しています。
これもまた、根をおろし直してくれることを祈るしかなさそうです。。。

Vol.14でも登場したRosemary projectの主役のたち、こんなに成長しました♡

Rosemary project とは私が勝手に決めた project 名です。
期間は3ヵ年計画。
コンセプトは「共生」
鹿さんたちとの共生 puroject なのです。

前にもお話ししたことがありますが、JHSの圃場には多くの鹿さんたちが訪れます。
この鹿さんたちとのお付き合いも随分長いものとなりました。
警戒、守り、拒絶、戦い、開き直り、挫折、諦め、共同。。。。。
初めからすれば私の気持ちはどんどん変化をたどり今に落ち着いています。

正式には project 準備として昨年の10月よりプレスタートさせました。
主役となる大勢のRosemaryを育てるところから始まりました。
そして今シーズンスタートの時点で、圃場内の一角に、25mプールほどの面積でネットを仮設定しました。

このRosemaryについては、JHS Herb Times Vol.14でもご紹介いたしておりますので、ご興味のある方はそちらもご覧ください。

昨年から仕掛けた苗づくり。
挿木自体に力があったのか?
プラグに始まり、ポットに移り、年越えした現段階では、ほぼ100%元気にポット内で成長中です。
この段階ではあまり頂けないことなのですが、花まで付け出して本当に可愛らしい事♡

一方で私は苗たちの定植間近にして、その土の調整に入っています。
予定通りこの project が進めば、3年後には全ての仮囲いを撤去する予定です。

自然と一体化する圃場。
herbだけが佇む何もないエリア。
自然の生物が許容してくれる空間。

私が、JHSが、求める理想です。
実現を祈りながら日々を送るだけです。

GW も間近となりましたね。
一般的にはお庭や家庭菜園が賑わう頃です。
皆様はどのように植物とお付き合いされているのでしょうか?

私はお祈りだらけの herbal life ですが、甲斐ある日々に感謝してGWを静かに圃場で過ごします。
また次回をお楽しみに♡

♡圃場内の人工的無機物はこの仮柵以外は全て無くなりました♡





2023年3月16日Permalink