2023 JHS Herb Times Vol.19

皆様へ
herbブーケに託し,
暑中お見舞い申し上げます♡

ベートーヴェンの交響曲田園を聴いているとずいぶん広大な風景が浮かんできます。
ヨーロッパの田園はさぞ雄大だったのでしょう。
それに比べJHSの圃場はなんとも静かでこじんまりとしています。
静けさや穏やかさ、そして危機的な旋律には時々同化するのですが?
それにしてもヨーロッパの田園風景は激しかったのでしょうね。
どうやら、JHSにはラベルの弦四の方がピッタリとくるようです。
多くの古典的な音楽を聴きながら思うことは、それらの芸術が生まれた環境で西洋のherb達は育っていたのかと想像が走ります。
そのようなことを思いながら7月を過ごすJHSですが、皆様はどのような思いで7月を過ごされましたか?

さて暦の上では上半期が終わり7月からは下半期に入りました。
6月30日が上半期の晦日にあたり、7月からは下半期の晦日12月31日を目指して時が流れていきます。

商業的には会計上、上半期、下半期と区別するのでしょうが、植物もシーズンの流れとしてはここで区切りが入るように私の目には映っています。

上半期のラストを飾ってくれたのは、Lavenderたち。
そして下半期のスタートに立ってくれているのは、EcinaceaやMeadow sweet、Elder達です。
お互いにステージを譲りながらherb達はシーズンの流れを演じています。

Echinacea & St.Johon’s Wort

ところで皆様は?
花に興味がありますか?そして種に興味がありますか?
この2つの質問に対して。。。
花に興味「Yes」、種に興味「No」と答えられる方が多いのではないでしょうか?
ガーデニングでのハーブ栽培的では二期咲き、四季咲きと言ってシーズン中に何度花が咲くか?について注目されている様です。
しかし私はただ単に「花」という点だけでみれば、herbの場合、全てを一期咲きとして扱っています。

一期、二期と同じような花を持っているようでも、植物にとっては着地点が異なるのです。
開花そのものがゴールの場合と、その開花は通過点に過ぎない場合など。。。

一方で根や枝も種子と同様に命の伝承を担っており、人の立場からは花が命のように扱われがちなのですが、植物にとっての花、根、茎、種子にはそれぞれ全く違った価値が存在しています。

JHSは「一粒の種からJapan Herb Science」というコンセプトのもとに歩んでいますので、ここで少し種についてのお話をしたいと思います。

種の沢山入ったMilk thistleの花殻

一粒の種を手に取りよくよく嗅いでいると、そこにはその子の全てが含まれていることを感じ取ることができます。
咲き誇っていた時の香り、少しピークを越え始めた頃の香り、葉の香り、茎の香り、根の香りと全てを感じ取ることができます。
「あぁ、紛れもないこの子の種だな」と思えるのです。

種の採取は難しく、「何を目的に採取するか?」
一般には翌年播種するために種を採取するのでしょうが、ハーバリストにとってはそこが少々違います。

むしろハーブは宿根するものが多く、意外にも播種のために種を採取することは少ないのです。

もちろん花の終わった後にタネができるのですが、花の終わりから、播種用のタネになるまでの間に、フルーツ、スパイスシードの2段階を含む事になります。
少なくとも私はその様に分けて種子と向き合っています。

香りを大事にする、薬効を大事にする上ではそれが欠かせません。

播種用の種まで熟した種の採取はほとんどのherbにおいて難しいものではありません。
しかしフルーツであったり、スパイスシードとしての採取においては少々困難が生じます。
採取のタイミングを見計らう事の難しさ、そして物によっては分別に非常に手間がかかる事もあると言った事など。。。

その困難が生じるherbは?
それは画像で紹介しているMilk thistle。
難易度がかなり高い代表の一つです。

第1関門はアザミですので、棘です!
これはちょっと触れただけでも電気が走ったような痛み、そして痕は赤くなりズキズキと痛みがなかなか取れません。
針の先に毒でも持っているのでしょうかね???

第2関門は種子が殻のとんでもない取りにくい位置に多く存在している事です。
少なくとも指では種子を取り出すことはできません。
特殊なやり方と道具が必要なのです。

第3関門は種子には広く自由に自らが飛んでいけるように一粒、一粒それぞれに羽のような複数の毛がついています。
その羽は当然ふわふわしており、しかし針のような毛ですのでこれが鼻に入ったり、顔についたり、汗をかいた腕や手に貼りついたり、衣服の中に潜り込んだりと、とにかく扱いが厄介なのです。
又なかなかこの毛は風化しないで土や、コンクリートにも張り付き残ります。
きっとベランダや道や屋上でこの作業をしていたら、ご近所から苦情がくることは間違えありません。

私には広い圃場がありそこで行いますので、散らかしたり、地面に張り付く分には問題がないのですが、一つだけ慎重に行わなくてはならない点があります。
それはもし作業中に風がふっと吹いてしまったら、羽の付いている種子はどこかに飛んで行ってしまうという点です。
どこに行ったかも不明で、翌年はとんでもない所からMilk thistle がそこ個々に発芽してしまうという結果に。。。

第1関門に上げた「棘」が危険なため、いくら自生を推奨する私でも、いささか「どこにでも飛んで行って咲いてもいいよ!」と言う訳にはいかないのです。

また、圃場には私以外に、メンバーやお客様もいらっしゃるので危険を回避するため整備しておかなくてはならない事情もあります。

それでも毎年春になると十分注意したはずなのに、お隣の畑や敷地でMilk thistleが顔を出すのも事実です。
春に見つけ次第それを片っぱしから除去する作業も、結構私の手を煩わしています。

横にあるぼんぼりはいくら引っ張ってもこの毛はこれ以上は抜けません。
お隣にある黒い種子は、
すでに一個一個にぼんぼりと同じような毛がついていたのを取り除いたものです。

これまでこの3つの関門があり、毎年2mの高さで見事に咲き誇るMilk thistleからたった2割程度の種子しか回収してこれませんでした。
しかし今年は100%の花殻を回収をする事ができました♡

それは第2関門を自分の中では許せるところまで行程を確立できたからです。

一方で肝心の種の収穫量は?
花殻を100%回収できたからと言って、K単位で種子が得られた訳ではありません。
一つの花殻から小さじ1杯(5g)程度の種子しか得られないのです。。。。
もちろんこのg数は、JHSクオリティーで満足いくところまで選別した結果ですが。。。

画像には黒々とした種子を見ることができます。
しかし実際に花殻から種子を取り出していくと、花殻によっては茶色やストライプが入ったもの、平たく膨よかに膨らんでいないもの、黒だけど艶がないもの等、花殻の選別を忠実に行なっていくと、使える花殻はどんどん減っていきます。
なかなか1つの花殻×5gとはいかないものなのですね。

ただ今年はどのような花殻からパーフェクトな種子が得られるのか?は判断つけられるようになりました。
本当に微妙な違いを見極めなくてはならず、私にとってのMilk thistleの壁は未だに高い気がしています。
それでも今シーズンは骨折り損のくたびれ儲けから卒業できたようです。
来年もさらに研究していきたいと思います。

余談ですが、選別していく中でパーフェクトではないイマイチ!!と言ったクオリティーのものがどうしても廃棄できずそれだけを別に集めました。
つまり90点の子達♡
私自身のためにハーブティーで飲んでみたいと思います。
きっとこれでも体のために活躍してくれるのだと希望的観測のもと大事に頂きたいと思います。

ところでここまでMilk thistleのお話をしたのですから、Milk thistleについて少々魅力もお伝えしておきたいと思います。

いろいろな効能が情報として拡散されている様ですが?
私の第一の選択は「強壮」です。
具体的には疲れた体、分解能力及び代謝能力が低下気味の体調、顔色や表情に誰の目にも疲労感、消耗感、衰弱が見られる状態。
これらの時に私の頭に浮かぶのがこのMilk thistleです。
私のセラピー歴の中で実体験で得た事実からのチョイスなのです。
常にそうならないようにサプリメントとして摂取するのも良いように思います。
あくまでも私の中でのお話です。

今シーズンもすでにMilk thistleは無事、土の中で眠りに入りました。
この魅力あるMilk thistleが来年も咲き誇る事を思い浮かべ
そっとしておこうと思います。

ここからは下半期に頑張るherb達を紹介いたします。

勢いを増す直径4mのRosemary

通年、やっぱりherbはいいなと私に力を与えてくれるRosemary。
今年からのRosemaryプロジェクトも含めてますます存在感をアピールするRosemaryです。
JHSには5種類のRosemaryが自生しています。

遊び心で3年前に定植したYarrow

ピンクの花の中の白を見ると本当に可愛らしいYarrowです。
たまには薬用、薬用と言わずチャーミングなherbも?と思い3年前に定植。
そしていよいよ自生を始めたようです。

いかにもherb色のYellow Yarrowです。

この子も3年前に定植したのですが、今年初めて開花しました。
2年間花もつけず何をしていたのでしょうね?
昨年一昨年と葉だけは豊かに咲いてくれていたのですが。
期待通りの色と大きさです♡
これも遊び心の一株です。

王道の薬用種 White Yarrow

流石に赤や黄色のYarrowとは違い、薬用種としての威厳を持って開花しています。
今シーズン背はちょっと低めですが、繁殖は着々と面積を広めながら、自生を続けています。
背が低めなのは私の責任、密集しすぎてしまっているのです。
時間のある時に、株を分けてもっと広々と自由に生かせてやりたいと思っています.

気をつけて見ていれば何処にでも咲いているMullein

アメリカから手に入れた種子より自生を続けるJHSのMullein。
咳止め、煙草葉と言ったイメージですが、感染症、アレルギーを起因としたくしゃみ、鼻水、咳、鼻炎、腫などに適応します。
私にとっての第一の選択は、花を集めてクループに対応したシロップに♡

ディオスコリデスやネイティブインディアンなどが伝承した堂々の薬用種ハーブです。
アメリカ、イギリス共に局方物となっています。

種子は100年でも眠ることができる優れもので、その一粒は小鳥も食べれないほど小さいもの。
自ら遠くへは拡散できず、最初の根つきが重要です。
そして花柄にできる一つの種房の中には何万と言う種子が含まれているのです。

英名ではtouch grassと呼ばれており、葉や花をとった後の茎を獣脂など先端につけてトーチとして野営したと言う、インディアンのハーバルライフ♡
夏の日暮れ、私は圃場でこのMulleinを眺めその光景を遠くに見る感じがします。

20年の継承をし続けるLemongrass
悲しいことに自生には成功していません。

神奈川のこの地においては開花を見ることもできず、そして放置状態では9割が年越しが難しいLemongrass.
これまでまぐれ的に自生した株もあるのですが。。。
だからと言って全滅した年に「あぁ残念。。」と終わらせることはJHSとしはできません。

自生は無理でも、継承の確率をあげるため、考えられる全てのアイディアをもとに毎年あれこれと冬越えの研究をこの20年続けています。
特に昨年はとんでもない方法を取って実験しました。
結果は継承はできたのですが、効率的に見ればNGと判断しました。
しかし重要なことを発見することもできました。

今シーズンは「継承の確実性を上げる事」を目指して実験する予定です。
ロスを軽減することを目標に今後の実験が続きます。
でも、もう近くまで、正解が見えてきています♡

ここ数年不調だったMeadowsweet

今シーズンはやっと順調さを取り戻す方向に向き直したMeadow sweetですが、不調を抱えた原因は私には明らかに見えています。
忙し過ぎで、大まかなことしかできなかったこと、手を貸してやれていないことに申し訳ない気持ちで一杯です。
秋には時間を作ってその原因を解決すべく手を入れさせてもらいます。

この子がJHSの圃場で発芽したときの感動を思い出します。
3年間、発芽に失敗させてしまったこのハーブ。
4年目にして発芽成功したときのあの喜びは今でも鮮明に覚えています。
正直、4年目で失敗したら諦めようと思っていた子なのです。
今シーズンは株としてのリベンジです。
理想的な生域がJHSの圃場に実現できますように♡

薄紅立葵

Marsh mallowというこのハーブは、ハーバルライフにおいては、お菓子のマシュマロの原料として根の部分が使われてきました。
でも私はマシュマロが食べたくて圃場のエリアを提供しているわけではありません。

このherbには優れた薬効が含まれており、喉の痛みや、胃の痛み、便秘には欠かせない力あるherbなのです。
和名からすると本当に奥ゆかしさを感じるのですが、秘めている薬効は強烈です。
そのため、栄養をたっぷりと要求してくるherb.
その供給を担うのは土しかありません。
土のコンディションが良ければ、いただく根茎も優れるということになります。

美しく咲き誇るMarsh mallow

葉やその手触り、花を見る限りは、今シーズンは完璧♡
掘り上げるのが楽しみです。
しかしタイミングはすでに逃しています。
どうしても、この葉と花が立ち誇る姿を見たかったからなのです。
今シーズン、私はそれが納得できたので、来シーズンへ向けて継承させ、その1年半後の初夏にベストなタイミングで掘り上げることを目指します。

それにしても見事で、美しくビロードのような柔らかい葉を持ち、高さも2m越えの成長を見せてくれました。
「本当にありがとう」と言って私なりに満足できた薄紅立葵でした♡♡♡♡♡

開花し風に揺られるFennnel
側で作業していると甘い香りがしてきます。

これまで優先的に鹿へ譲ってきたのですが。。。
今シーズンは鹿に譲らず、鹿の立ち入れないエリアに陣取ってみました。
私が頂きたいと言うよりは、鹿に食べられたFennellの姿が余りにも野生的で、可哀想だと毎年哀れさを感じてきたからです。

花、フルーツ、新芽、そして葉を頂きました。
茎を痛めず採取したので、また下から次の新芽を伸ばしてくるはずです♡

収穫物の活用は多方面に渡ります。

knotted marjoramと言う英名通り見事なknotを見せてくれる
Sweet marjoram

例年通りうっとりする様な香りを放ってくれるJHSの Sweet marjoram。
クオリティーも満足いく状態で自生を16年も続けてくれています。
どなたが圃場にいらしても、豊かな香りに満足して下さり、「この様ないい香りは初めて!」「これまで嗅いだMarjoramとは香りが全く違う本当にいい香り」と。
毎年、プロの方からもお褒めの言葉をいつも頂いている、JHSの優等生です。
私はこの香りに毎年満たされているのでその価値がよくわからないのですが?
おそらく、marjoramは学名における属名がOriganum(オレガノ)ですので、Origanum vulgareの様な香りが強く出た香りが一般的なのかも知れませね。

Marjoramの効果はとにかくrelaxation♡
特に筋肉に対してはLavenderを上回ります。
シャワーではなくお風呂を溜めて入浴される方には枕ぐらいの束を浮かべて、それに抱きついて入浴すればその夜の眠りは最高のものになるでしょう。

Mintの素養がある様な香りを持つCatnip

英名はCatnip、しかし和名はイヌハッカ?
猫と犬??
なんだかどうなっているの?って感じすが、諸説色々あります。
私が有効と思っている説は、Catnip(猫の爪)は確かに猫がミントのようなこの香りを好んで噛むことからの由来。
そしてイヌハッカの由来は、和名においてイヌとつけるのは、イヌサンショやイヌサフランなどクオリティーが劣るものに接頭語としてつけられる習わしから、イヌハッカと命名されたのだと受け止めていますいます。
確かに、ハッカとして嗅いだ場合、少々ハッカの香りからは遠い?感じがします。
でも一部は、ハッカを思わせる素養も持ち合わせているからです。

命名はいいとして、このCatnipは私にとってある事に特化した位置づけで自生させているのですが、それは?
Nepetalactoneと言う成分に注目しているからです。

一般的にはこのラクトンは発汗作用や解熱効果に期待して使われているのですが、それとは別にどうやら蚊やぶゆなどに対して昆虫忌避作用がある様に感じています。
他の精油や蒸留水との組み合わせによって相乗効果も得られますので、まだまだ私の中では研究の余地があるherbの一つです。

6月後半より、上半期のherb達はひと時の休息に入りました。

来月はお盆も迎えいよいよ後半、秋に向かっての準備をherb達は始めています。
今年の夏は体温を超える温度も日常的になってきましたね。
どうか皆様もご自愛されてお過ごしください。

私も早朝勝負のタイムテーブルでherbと向き合う毎日です。
それぞれ四季の温度や風を受けて季節を感じたいと思います。
また来月。。。。。。

2023年7月27日Permalink