2023 JHS Herb Times Vol.18

出来上がった今年のtincture

雨がしとしとで皆様はいかがお過ごしですか?
私にとって雨の日は管理日誌を整理したり、お料理をしたり、束の間圃場の作業から解放されるひとときです。

しかしこの雨がなくてはherbは育たないので、ありがたく受け止めています。
心の中では真夏の7月~9月まで生き延びられるよう「たっぷりと地下に溜め込んで!」と祈っているのです。

JHSの圃場はご存知の通り、全く水がありません。
頼りは天からの雨だけです。
しかしこの16年散水を一度もすることなく、現在のherb達が生息しています。
あの子達が自ら力を振り絞って生き抜いてきたのだと思います。
植物の力強さを感じずにはいれません。

もうすぐ来る真夏。
私たちはペットボトルの水を準備し、たった半日程度の滞在にもかかわらず大騒ぎになります。
JHSの圃場は360度パノラマ状態ですので、植物は太陽から逃れる場所がありません。
本当に強い生物だと改めて思います。

さて6月はシーズン最高のピークに達する時期でもあります。
5月までにWild Flower達の宴がひとしきり終わり、今はLavenderの存在感を感じる光景です。

今回はJHSのLavenderについて少しお話ししたいと思います。

圃場に生息するLavenderは、16年株、6年株、3年株、2年株。

・16年株は私が今の圃場を立ち上げた時の株。
・6年株はその16年株がピークを越え始めた頃新規更新した株。
・3年株は現在2年株の先発として実験的に16年株から継承した僅か9株。
・2年株は6年株に懸念生じ実験株の状況を踏まえて16年株から継承した250株

上記4系統が存在しています。

16年株について
16年未だに生き残っている数株は私の中では申し分のない株です。
Glossoと言うフランスのLavandin系で、Glosso氏がフランスのLavender産業を支えるために開発した品種。
私にとっては未だに、後にも先にも類を見ない最高の品種です。
JHSの16年株は幸いにもGlosso氏が言われている寿命をすでに全うしており、それでも尚且つ本年も健康に咲き誇っています。
その生き残った株は数株ですが私にとって、愛おしく思う株でもあり、誇らしい株達です。

16年目を迎えたJHS初代の株

6年株について
6年株は、16年株がピークを過ぎたため、次世代の株を用意しなくてはと思い定植した株になります。
私はそこで大きな間違いを起こしました。
16年株があまりにも見事な株だったため、挿木のために枝を採取することをためらってしまったのです。
傷つけたくない思いが先走ってしまって。。。。。。

一般には、花枝を収穫して、秋に剪定と言って少し株を小さくする程度のカットをし、その残骸から挿木用に挿し枝を選んで苗作りに活用している様です。

しかし私が専門的な立場から苗を作るときは少々違います。
穂(花)を採取するポイント、剪定をするためのポイント、そして挿木用に採取するポイント、この3つは微妙に私の中で違いがあるのです。

難しい話ですので、簡単にお話しすると挿木用のポイントは株元に対して一番深くカットすることになります。

16年株を傷つける度胸がなかった事と、正直Glossoはどこででも手に入れられる品種ですので、16年株をそのままにして、安易に種苗屋さんから必要数を取り寄せて新規株として定植したのが6年株となったのです。

16年株を最初に入手した頃からはすでに10年以上の月日が流れています。
その新規購入した株は、何世代も交配を続けさせられたか?雑種が入り込んだか?定かではありませんが、品種名は同じGrossoでも16年前に入手したそれよりもかなりか弱い株で、今はその時のように強い株は手に入れられないと言う現実に出会ったのです。

そのことに気付いたのは、新規株を定植してから2年目の頃でした。
「こんなに違うのだ」と今更ながらと言った感じでした。
たとえ若い株だと考慮しても 収量、香りともに納得のいかないものでした。
その年は、その株達からは一切収穫せず、結局、歳をとった16年株に全てを委ね、収穫・蒸留を行いました。

一方でその16年株から取れる香と収量は歳をとっていてもこれまでと何ら変わらぬ健全なもので、Lavandinの存在を強く伝えてくれるものでした。

通常、苗作りして定植した場合、収穫までには早くて2~3年はかかります。
昨年6年株の弱さを知り、慌てて16年株の子孫を残す意味で挿木用の枝を16年株からもらい250株の苗作りに着手しました。
私の中では、作り主Grosso氏がいう寿命を既に全うしている16年株には最後の大仕事として挿木用の枝を頂いても許してもらえる様な?そんな勝手な私の思いで、剪定鋏を入れさせてもらった次第です。

幸いにもその苗作りの結果はほぼ100%に近い成功率で、予定通りの健全な250株の苗を作ることができました。

これまで農を行なっていて、「優しい気持ちを持っていては進んでいくことができない」と感じています。
単純な優しさが、大きな問題を常にひき起こします。
その思い込みに近い優しさを捨てて、一歩引いて先を見据えて管理していかないと取り返しのつかないことにも繋がっていくことを私は今頃になって実感しています。

Lavender一つをとってもギリギリの判断で今回は危機を免れましたが、危うく伝承的なLavenderを失うところでした。
私の精進もまだまだと感じる時でした。

ところで、挿木そのものにについてですが、頭の中では挿木用の枝を取る木は、健康で若い株で充実した木を親木にした方が良いと卓上の理論にあります。
しかし実際に先が既に見えている老木から取った枝でその理論通りの結果が出るのかと言うとそうではない実験結果をJHSの圃場では得ています。
未熟な親木よりも、健全であれば老木の方がいい子孫を残す結果なのです。

一方で、6年株は弱い株と前述したのですが、現状としては本当に弱い株は死んでしまい当初の株数よりもかなり減少したとはいえ、生き残っている株達もいます。

その子達は年々力をつけ、いい状態で生息している事をここで付け加えておきたいと思います。
この流れも私には非常に興味がありいい実験株となっています。
当分収穫や蒸留はしませんがこの子達とも大事に向き合って彼らの動向からさらなる学びを得たいと思います。

年々強くなりながら生き残る6年株

3年株について
さて3年株は今一番若い2年株の先発として実験のためだけに仕立てた9株です。
この3年株は、16年株の血を引く株で定植3年目にして、6月中旬より平均約600本/1株を上回る花穂を収穫しています。
2年株の将来を物語る結果で、このまま慎重に管理を続けていきたいと思います。

一列にエッジを飾る3年株(実験株)9株
3年株(実験株)現在1株より平均約600本前後の花穂を収穫しています。

2年株について
お陰様で、今生育中の2年株250株は、これまでにない、欲目で見れば16年株を上回る状態で力強く生きようとしています。
期待はしていませんが、祈るばかりです。
あえて厳しい環境で管理し続けるJHSの圃場で生きていくことは彼らにとっても容易でないことは確かです。
どれだけの株が生き残るのか計り知れませんが、たとえ1株でも2株でも0でさえなければ継承させる自信は私にはあります。
既に厳しい現状の中で継承を始めた2年株達。
それぞれが数輪の花を咲かせ、その色はとても色濃く私に勇気を与えてくれるものです。

3年株を見習って頑張ってほしいと願うばかりの2年株
2023年の3月にJHS研究圃場に根を下ろしました。

さて、Lavenderのことはたっぷりお話ししましたので、このハイシーズンの他のherb達にも目を向けてお話ししたいと思います。

私が長く栽培しているGarlic。
農業でもなく、生産物としても育てていません。
あくまでも健康を維持するための薬用として15年以上栽培実験を続けています。
一般には連作障害や肥料、植え時期などしっかりとしたロジックの元育てているのだと思いますが、JHSでの栽培方は全く違います。

JHS圃場には毎年くる年も来る年も同じ場所に植え付けをしているGarlicエリアが存在しています。
そして種以外に使うものは、最初にたっぷりと入れる有限会社サンシンの堆肥のみ。
植える時期も通常は12月前後、極端に年越えの2月植え付けの実験も行ってきました。
植え付けの深さも通常の2倍近くに深植え。
追肥は無し。
土がけも無し。
ただ株周囲に出てくるスギナを時間があれば折ってその場に置くだけ。
そして地上部を見て収穫です。

結果的には毎年順調な収穫を維持できています。
サイズはM超えのLサイズあたりのもの。
味は甘くもスパイシーさにもかけていません。
えぐみはほぼ感じられず、匂いは翌日にまでは残らないスタイルのGarlicです。

タネは毎年2k程度の力のあるものを選んでいます。
量的にはたいして作っていませんが、収量は種2kから200個程度。
種類はホワイト6片だけです。
これに関しては色々なアドバイスをいただいているのですが、実際に使うときに6片の方が粒が大きく、調理や加工がしやすいので、それだけの理由で6片しか育てていません。
環境や地域的なことを考えれば、他の品種がいいのは理解しているのですが、
調理、加工をする私としてはそこは譲れない点です。

そんな訳で、今年も満足くGarlicを収穫することができました。

Garlicは薬用としては強壮系のherbです。
herb tea、cosmetic、medicine 等には少なくともそれに向く香りではないと私は判断しています。
私は料理で活用することにもっぱら徹しています。
諸外国ではアルコール飲用、サプリメントなどに活用されている様ですが、私にはなかなかその形では創造力が湧いてきません。

料理においての活用では、逆に創造性をふくらまし、実際食べてみても美味しく、心地良さを与えてもらえます。

前述で200個と言いましたが、これ全てが私の1年間のGarlicの消費量に値します。
1片では無く1個単位で料理に活用し摂取しています。
私は慢性病を抱えている訳でもなく、体調に問題が起きていない状況ですから、Garlicを摂取してこれに効くあれに効くとはここでは述べられないのが残念です。

しかし、日常生活において筋肉痛を起こしたり、筋肉痛になろうである時に、意識的に多めのGarlicを摂取すると、Garlicの効能を意識できるのは事実です。

そうした訳で、Garlicの活用はもっぱら炒め物、煮込み料理、パスタとキリがなく、他はherb salt、herb seasoning等で積極的に取り入れているherbの一つです。

2023年も無事に収穫できました

Vol.17でご紹介したMilk Thistleですが、開花期が長く後からどんどんと開花し続け株の衰えを見せません。
加工に手間がかかるためこの収穫は少々私の気持ちを重くしていますが、この綺麗な色に心動かさせるものがあります。
しかし本当にこのMilk Thistleは巨大で、葉は恐竜を思わせるような力強さ。
私はマリアアザミどころか「恐竜くん」と呼ばせてもらっています。
棘がすごいんです!本当に。。。。。

一株でここまで成長したMilk Thistle

Wood betony 私の言葉で言い表すと「回遊魚的な性格の人に欠かせないherb」の一つです。
そうで無い性格の人には掴みどころない表現ですが。。。
日頃の生活で、止まることができない、のんびりと休息ができない、仕事しか頭になくじっとしていない人とでもいうのでしょうか?

このherbはコアになりすぎて精神的に壊れ、迷い、不安、空虚、無気力、怒りを抱えた時に活用しています。
みぞおちから脳にかけて助けとなってくれる実感があります。
強壮だけでなく鎮静の両面の力を持つWood betony。
このherbについてある古代医師が47種の症状に効果があると言った全てを体感したわけでは無いのですが、私にとっては今受け止めている効能だけで充分でなherbです。
これを摂取したからと言って、鎮痛剤のようにはっきりとすぐに効果を感じられるわけではありませんが、私はいつ知らず自然に回復した様な?なんとなく助けられた感覚を得ています。
私は大事にこのherbを絶やすことなくJHSの圃場に自生させています。

 圃場外にあるGarden領域に咲くWood Betony
圃場内にはこのエリアとは別に1畝しっかり自生しています

ハイシーズンのこの時期はたくさんのherbをご紹介したいのですが、今回はここまで。。。

一年中、この時期を頭に描き圃場での日々を送ってる私にとっては、日1日がとても貴重で大事に思えてきます。

St. john’s wortに囲まれるEchinacea angustifolia
園芸種に押されるEchinaceaですがこれがnative indeianが愛した薬用種のEchinacea

皆様もご自愛されてお過ごしください。
又、次回をお楽しみに♡

2023年6月16日Permalink