2023 JHS Herb Times Vol.17

シーズン開幕を伝えるwild flowers たち 
California poppy 🌿
昨年の管理がうまくいきコントロールできたchamomileエリア

梅、桃、桜ととんとん拍子に開幕した今年の春。
JHSのherb達はマイペースにherbシーズンをスタートしています。
街の中とはちょっと違うタイムテーブルをもつ山沿いの春。
全てが遅くそしてゆっくりとでも淡々と春の色を濃くしていいます。

皆様はGWの頃はherbも豊かに咲き始めていると思っているのかもしれませんがそうではありません。
慣れている私でも、今年は大丈夫かしら?昨年のように咲き誇ってくれるのかしら?と気を揉みながら圃場を観察する毎日です。
しかし丁度GWが終わった頃からぐぐんと勢いを増して私を安心させてくれます♡

herb達を信頼していない訳ではありませんが、このタイミングは昨年の私の管理の評価がなされる時期でもあるのです。
まるで子供達が通信簿をもらう時みたいにドキドキする時です。

圃場の管理において、次の年にどう繋いでいくか?
これが重要な課題なのです。
管理の仕方一つで、翌年の圃場の様相が変わってくるのです。
栽培も大切ですが、自生を目指しているJHS圃場のherb達が、次の年へどう受け継ぎ?どこに再現し?面積的には?と色々考えなくてはならないのです。
もちろんherb達とミーティングして打ち合わせができる訳ではないので、私の思い通りにはなりません。
しかしある程度は私の意図に沿ってもらう?歩み寄ってもらう方法があります。
特にwild flowersにおいて、彼らは本当に自由奔放で、自由精神にのとって旺盛に生き抜いていくため難しいです。

wild flowersに関して、私のとる管理方法は?
2段階に分けて行なっています。
それは前年度の開花の終盤期と本年度の発芽時期の2期に分けて行なっています。
残酷な言い方をすれば、倒す時期と殺す時期となる訳です。
どちらも残酷で心を痛める管理です。
できる事なら、JHSの圃場に一たび生を受けて自ら生きると決めてくれた子達を、皆最後まで咲かせ、朽ち果てるまで、一生を演じさせてやりたいと思うのが私の本心です。
実際そうしていた時期もありました。
その実戦も踏まえた上で、今の私の管理方法があります。

その方法はできる限り「土とherb達の労力を無駄にしない」そしてもし無駄が出た時はその無駄を「再生させる」この2つの概念に基づくものなのです。

rosemary projectを行なっている敷地
25mプールほどの面積に相当します。

昨年秋より始めたrosemary project。
とりあえず200本の苗は順調に育ち、この春定植にも漕ぎ着け、一時止まっていた様子でしたが、いよいよその場所で生きることを決めたらしく動き始めています。
10cmほどの小さな苗のため、これがそれぞれ2mに育つまでまだまだ先が長いようです。
今は小さすぎるため、管理中刈り払いで飛ばしてしまわないかが1番の問題です。
予定では株間は2m程度。
実際にはその倍は定植してあります。

旺盛に生きるVitex
剪定されるVitex
スッキリとしたVitex

この敷地内の角に生息している、Vitexという精油名を持つChaste tree。
これまで一度も剪定をせずにきたのですが、根もとの管理ができなくなったことから思い切って初めての剪定を行いました。
生産、収量を問う必要のない私にとっては、剪定は行わないのを原則としています。
剪定はあくまでも人間本意の行為であって、植物にとってそれが必要であるかどうかは定かではありません。
植物は本来自分にとって、必要なものは残し、増やし、いらないものは自ら落としていくものと私は観察しています。

今回初めての剪定を行った訳ですが、この後もVitexの生育を開花期に向けて興味深く見ていきたいと思います。

今年も生育し始めたchaives

日本に生息するネギ類で十分なのですが、やはり生存させておきたいのがchivesです。
一見、小ネギなのですが、食べてみるとchaivesにしか得られない食感と味がそこには存在します。
もちろん花も可愛く、安定してきた春を彩ってくれます。
私はこれを眺めるたびに、餃子を頭の中に描いてしまいます。
熱を加えても歯応えに近い食感があり、歯応えと言っても硬いのではなく、「ここにいるよ」といった控えめな存在感を与えてくるのです。
またネギなのですがニンニクにも近い香りと味を持っています。
私の拙い料理でchaivesを活用するレシピーは、第1の選択において餃子しかなく、毎年美味しくいただいています。

株を強く育て収量を上げるための栽培法に反して、私の栽培法の中で共通していることは、どの植物にも、発芽して、葉と根を伸ばし、成熟して花をもち、実となり種となって植物の一生を終える、この1サイクルを一回は経験してもらうことを重視しています。
ですから、chivesも同じ。
ネギ科でいう葱坊主は、シーズン初咲きの際はとりあえず最後までいかせてしまいます。
そして頃合いを見て切り戻し、次に上がってくる茎から、しっかりと収穫をさせてもらっています。
秋になるまで何回も収穫を楽しませてくれます。
そうして増え続けるchaivesたち♡今年は少し株分けをしてみようかな?
毎年毎年書き加えられる遺伝子。
本来あるべきサイクルを忘れさせないように大事に育てていきたいと考えています。

毎年見るこの光景、でもやっぱり綺麗今年も感謝です
美味しいtinctreが仕上がりますように

今年のchamomileは一気に盛り上がりました。
今年のpoppyは一番花はあっという間でした。
今年のcornflowerは昨年の不作を挽回しました。

毎年見る光景ではあっても、毎年特徴がそれぞれにあります。
もう少し詳しくお話しすると。。。

chamomileはマウントの上がりが驚くような大きさのものは少なかった様な気がします。
しかし粒揃いで、量的には十分でした。
エリアを狭めたので、少々密集気味で、風通しが悪くなってアブラムシに見舞われるのではないかとちょっと心配していたのですが、アブラムシへの抵抗力は合格♡
雨に周期的に見舞われたことと、粒が小さくなるのが少々早めで、蒸留する時間もなく、今年は必要に慣ればドライからの蒸留を行うことにしています。。

poppyは面積的にはこれまでで一番かもしれません。
ただし大きな花を持つ1番花の期間が短く、2番花、3番花への移行がかなり早く、その度に花が小さくなっていくのも急速でした。
一方で種子が仕上がるのは逆に時間がかかっているように見受けます。
おそらく日照不足なのかもしれません?
しかしこのpoppyで作るtinctureは、モルトの効いたウィスキーのように美味しいので、多めに収穫しました。
その時の花びらのビロードのような柔らかさ、感触がとても印象的です。
この花びらの中に飛び込んで寝たい気分です。

cornflowerは未だに昨年の不作が思い出されます。
しかし今年はそれを挽回して安定した収穫が可能となりました。
ただ今年も一番咲きの頃は鹿さん達に譲りましたので、その後ゆっくりと採取させてもらっています。
よく観察していると、鹿さんは1番花をまるで機械でカットしたかのように上方部20cm程度を食べてくのですが、一番花だから狙っているのではなく、ただ単に一番花の咲く位置が丁度高さ的に彼らにとって食べやすい位置にあるのではないかと思うのですが?定かではありません。
それか2番花が咲く頃には他にもっと彼らの好物が山の中にあるのかもしれません。
1番花の頃は本当にあっという間に食べられてしまい、いつも私の方が惨敗なのです。
2番花の頃になると比較的鹿さんはゆるりとした行動に出ます。そのおかげで私も焦らず十分に収穫できる状況です。
彼らが1番花を食べる結果、2番、3番花は脇から伸びて低い位置に開花するのです。
少なくともこの2〜3年で私も学習し、「今年はBlue cornが少ない!咲かないのかも?」と早春の頃鹿が食べていることに気付かずにその様な心配を抱くこともなくなりました。
Blue cronにも香りがあったらいいのになと毎年思うばかりです。

今年のMilk thistleは合格!

なかなかこの黒々としたタネの採取は難しいMilk thistle.
タネを取り出すタイミングを見計らうのが難しいのです。
早過ぎれば白っぽく、遅過ぎれば茶色っぽく。
この艶やかで黒ぐろとしたものが完成形。
そしてさらに難関はこの取り出し方です。
血だらけになるか?完全に取りきれず捨ててしまったりと。。。
なかなかハードルが高いherbです。
自分にとって今は必要なくても、もし誰かが必要になった時になくては困ると思い、毎年採集に励んでいるのです。
一つの疑問が何年も前から頭を離れず、今年はそれを探り始めました。
それは花から種を取り出す作業工程です。
もちろん従来のやり方でも毎年回収して乾燥し保存しているのですからいいのですが、今のやり方ではとても手がかかりすぎで、もっと別の方法があると思っているのです。
いろいろ実験をして答えを導き出していきます。
ちょっとアイディアが生まれたので、早速今年はトライしています。
うまくいけば皆様にもお知らせしたいと思います。

Calendula

タネから育てたcalendula.
今年は何故か多くの種類のCalendulaを育てています。
八重咲きを始め、シングル、花びらの面は黄色裏は強くフラボノイドを含むパープルとこれまでに栽培歴のない珍しいものまで。。。
Calendula officinalisを元に全てオーガニック種子を入手し播種したもの。
2月播種で4月までポットで育成させ、定植して今に至っています。
ひょろひょろとなりがちですが、今年はしっかりと地に足をつけガッチリとした姿で、成長していっています。
ただ梅雨の時期をどう乗り越えられるかがポイントになるのでしょうか?
今年は種子を採集する目的もあり、花用と種用と2系統で管理しています。
種子用に管理するのは久しぶりです。
近年、輸入種子が日本の検疫所で全て捨てられ手に届かなくなった今、自生を立て前に受け継がせていくことに努力しています。

優等生のSage
白花のSageもいい種子を持ちそうです♡

プロの皆様から香りの高さを絶賛されるJHS圃場のSage

私は毎日JHS圃場のherbの香りに囲まれ仕事も生活もしています。
herbごとにそれを「私の香り基準値」として海馬に収めています。
同じ品種でも本当はいろいろなところで栽培されているherbの香りを知ることが大切なのですが、なかなかその機会が少ないのが現状です。
もちろん豊かな香に恵まれ、herb達へ感謝の念を持って私は向き合っていますが、人様に特別に絶賛されても、あまりピンと来ません。
それは私にとってその香りが日常的で当たり前のことだからです。
JHSのSageはあまりにも多くの人に褒められるので、「そうなんだ?これが普通」ではなく、「すごいことなのだ」と思い改め、今年は頑張ってくれているSageを珍しく私も褒めてあげています♡

Marsh mallow

ここで皆様に触れて頂けないことが本当に残念なherbです。
触れた瞬間、別名ビロード葵とも呼ばれる由縁がすぐに理解できます。
この葉で作ったシーツとブランケットに包まれて寝たくなるほどの肌触りです。
葵は多くの品種が存在しますが、JHSではBlue mallowとこのMarsh mallowの2種類だけを管理しています。
私はMarsh mallowの方に興味をそそられています。
特に地上部ではなく根に興味を持っています。
お菓子のマシュマロウは、初めはこのherbの根を粉にして作っていました。
お茶にしてもトロッとしたテーストで、それを納得させてもらえます。
便秘及び、喉の粘膜質の炎症においては特効薬として第一の選択で私は処方に用いています。
しかし、薬効ある根に集中して育てることに始まり、この生の姿からメディスンに加工するまでに2年ほどの歳月を要し、なかなか手強いherbの一つです。

Lavandin Grosso

まだまだこの5月にご紹介させ手頂きたいherbはたくさんあるのですが、今回はこのぐらいで。。。。
6月はいよいよLavenderの季節を迎えます。
Lavenderは魅力あるherbです。
今年はどの切り口からご紹介しようかと迷うところです。
ではまた次回に。。。。。。

2023年6月12日Permalink